老齢厚生年金の支給開始年齢が段階的に60歳から65歳へ引き上げられることにより60歳から64歳までの「公的年金の空白の期間」に対応するものとして、2013年4月に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正が施行されました。
これにより60歳以降も働き続ける事が当たり前となってきましたが、60歳以降の働き方の違いで年金額が異なってきます。
60歳以降も働く方に給付される制度についてご説明いたします。
【年金】
まず年金を受け取るためには、公的年金制度への加入が原則25年以上必要です。
国民年金に加入した方は20歳から60歳までの40年間で保険料を納め終わり、年金の支給が65歳から始まります。
厚生年金においては、25年間の受給資格期間を満たすために、70歳に達するまで任意加入ができます。
また、滞納期間がある人は65歳に達するまで任意加入ができます。
60~64歳で繰り上げ受給する場合0.5%~30%減額されることとなります。
【老齢厚生年金】
60歳以降も厚生年金に加入ながら働く人に支給される(特別支給の)老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。
また60歳から65歳までは、生年月日によって厚生年金に1年以上入っていて、受給資格を満たしている場合は、特別支給の老齢厚生年金がもらえます。
ただし給料の額に応じて支給額の全部又は一部がカットされます。
○60~65歳未満の支給停止月額
①基本月額が28万円以下で、 総報酬月額相当額が47万円以下のとき
・ 支給停止月額=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2
②基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円を超えるとき
・ 支給停止月額={(47万円+基本月額-28万円)×1/2+
③基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円以下のとき
・ 支給停止月額=総報酬月額相当額×1/2
④基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円を超えるとき
・ 支給停止月額={47万円×1/2+(総報酬月額相当額-47万円)}
○65歳以上の支給停止月額
⑤ 基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超えるとき
・ 支給停止月額=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×1/2
※基本月額・・・年金額(年額)を12で割った額。共済組合等からの老齢厚生年金も受け取っている場合は、日本年金機構と共済組合等からの全ての老齢厚生年金を合わせた年金額を12で割った額。
※総報酬月額相当額・・・毎月の賃金(標準報酬月額)+1年間の賞与
(標準賞与額)を12で割った額。
※支給停止・・・共済組合等からの老齢厚生年金も受け取っている場合は、全ての老齢厚生年金に対する支給停止の総額を、それぞれの老齢厚生年金の年金額に応じて割り振り算出します。
※詳しくは最寄の社会保険事務所にお問合せ下さい。
【雇用保険】
雇用保険は、失業した時などに給付が受けられる、働く人にとってはなくてはならない保険です。
受給要件を満たしている方であれば60歳を超えて働き続ける場合にも給付を受けることができます。
ただし、65歳を過ぎると新たに雇用保険に加入することはできません。
高年齢雇用継続給付
雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の加入者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった方を対象に、賃金額の0.44~15%に相当する額が雇用保険等から支払われるものです。失業手当・再就職手当などの基本手当を受給していない方を対象とする「高年齢雇用継続給付金」と、基本手当を受給した後60歳以降に再就職した方を対象とする「高年齢再就職給付金」の2種類あります。
雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の方で、60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満となった場合に支給されます。
ただし年金を受けながら厚生年金保険に加入している方が高年齢雇用継続給付を受けるときは、在職による年金の支給停止に加えて、年金の一部(賃金額の0.18
~ 6%)
が支給停止となります。
高年齢継続雇用基本給付金の支給率と年金の停止率